中世イングランドを舞台に修道士カドフェルの活躍を描いた傑作歴史ミステリシリーズ。
感想記事をまとめました。

修道士カドフェル1『聖女の遺骨求む』/エリス・ピーターズ
☆記念すべき第1作。聖女ウィニフレッドの遺骨を探しに行くことになったシュルーズベリ修道院の一行。ウェールズ出身で、元は十字軍の戦士だったカドフェルも通訳を兼ねて同行、目的の村に入るとそこで殺人事件が起こり……。

修道士カドフェル2『死体が多すぎる』/エリス・ピーターズ
☆後に作品のレギュラーキャラクターとして大いに活躍する青年貴族ベリンガーが登場。敵か味方か、なかなかその真意がわからないベリンガーとカドフェルの丁々発止の「だまし合い」が楽しい。

修道士カドフェル3『修道士の頭巾』/エリス・ピーターズ
☆表題となっている「修道士の頭巾」とはトリカブトのこと。毒にも薬にもなるトリカブト、カドフェルの調合したものが殺人に使われてしまい……。カドフェルのかつての恋人も登場しますよ。

修道士カドフェル4『聖ペテロ祭殺人事件』/エリス・ピーターズ
☆物語の背後にずっと流れているスティーブン王と女帝モードの争い。この4巻で起こる事件の背後にも、その争いが影を落としています。カドフェルシリーズに登場する女性はみな魅力的ですが、今作のヒロイン・エンマも見事です。

修道士カドフェル5『死を呼ぶ婚礼』/エリス・ピーターズ
☆40歳以上も年上の男に嫁がされることになった乙女。けれど花婿は謎の死を遂げ、乙女に横恋慕していた若者が容疑者として疑われるが……。原題は「セント・ジャイルズのハンセン病患者」となっており、ハンセン病をめぐる差別について考えさせられます。

修道士カドフェル6『氷のなかの処女』/エリス・ピーターズ
☆アーミーナとイーヴという貴族の姉弟を探してほしいという依頼。弟が見つかったと思えば姉がいなくなり、姉が見つかったと思えばまた弟が……。姉弟の行方、そして氷の棺に閉じこめられた修道女の遺体との関わりは?

修道士カドフェル7『聖域の雀』/エリス・ピーターズ
☆修道院という“聖域”に逃げこんできた一羽の雀。それは殺人犯の疑いをかけられた旅芸人の若者だった。カドフェルシリーズの王道、「濡れ衣を着せられた若者を救うためカドフェルが真実を暴く!」お話。好きです。

修道士カドフェル8『悪魔の見習い修道士』/エリス・ピーターズ
☆2巻3巻でカドフェルの助手を務め、5巻ではハンセン病の療養所に務めつつ活躍してくれたブラザー・マークがまたもや活躍。登場時にはそうも思わなかったのに、すっかり「聖人の資質を持った修道士」として一目置かれています。登場人物の成長が見られるのもシリーズ物の醍醐味ですね。

修道士カドフェル9『死者の身代金』/エリス・ピーターズ
☆1巻目で57歳だったカドフェル、この9巻目では61歳になっています。5巻目で殺された「40歳以上も年上の花婿」の長年の愛人だった女性エイヴィスが尼僧になって再登場。最後の、事件の決着のつけ方がいかにもカドフェルシリーズです。

修道士カドフェル10『憎しみの巡礼』/エリス・ピーターズ
☆6作目で登場したカドフェルの息子が再登場。巡礼者の中に混じっていた奇妙な2人の若者の正体は……。「罪を償う」とはどういうことなのか。ある「罪」に見合った「罰」とは何か。カドフェルシリーズではいつも、「人が人を裁く」ことの難しさを考えさせられます。

修道士カドフェル11『秘跡』/エリス・ピーターズ
☆11作目まで読んできて「これが一番の傑作!」と思った作品。殺人事件は起こらない。起こらないのにここまで読ませる、ピーターズさんほんとすごい。その手腕を堪能してください。

修道士カドフェル12『門前通りのカラス』/エリス・ピーターズ
☆新しくやってきた教区司祭エイルノスは着任早々、教区民から「カラス」と渾名されるほど嫌われていた。彼が死体で見つかった時、「あの神父を殺す動機のあるやつはいくらでもいる」と言われるほどに……。聖職者として人を救うとはどういうことか、そもそも人として、もっとも大事にすべきこととは。

修道士カドフェル13『代価はバラ一輪』/エリス・ピーターズ
☆若くして未亡人になった服地屋の女主人ジュディス。彼女の周りで殺人事件が起き、彼女自身も行方不明に。裕福で商売の才覚もある彼女を周りの男達は放っておかない。最終的にジュディスの、いえ、ピーターズさんの(笑)お眼鏡にかなったのはもちろん……。

修道士カドフェル14『アイトン・フォレストの隠者』/エリス・ピーターズ
☆修道院に預けられていた10歳の少年リチャード。父親が亡くなり、祖母は彼を12歳も年上の娘と結婚させようとします。幼い娘が父親ほどの男と…はよく聞きますが、少年が年の離れた女性とパターンもあるのですねぇ。殺人事件の真相以上に、この「10歳の少年の政略結婚」問題が面白かったです。

修道士カドフェル15『ハルイン修道士の告白』/エリス・ピーターズ
☆屋根の修理に当たっていた修道士ハルインは作業中の事故で生死の境をさまよい、死を前にした告解で「18年前の罪」を告白。奇跡的に一命を取り留めた彼は、18年前の罪の場所へと巡礼に赴くが……。殺人事件が起こらなくても本当に面白い。

修道士カドフェル16『異端の徒弟』/エリス・ピーターズ
☆羊毛商である主人について東方世界を自分の目できた若者イレーヴ。「自分の頭で考えよう」とする彼は「異端」の疑いをかけられてしまい……。現代の日本人には「え?そんなことで異端扱い?」とびっくりしてしまいますが、権力者が大衆の知力を奪おうとするのは決して中世だけの話では。

修道士カドフェル17『陶工の畑』/エリス・ピーターズ
☆新しくシュルーズベリ修道院の土地となった場所から女の白骨死体が!果たしてその女の身元は、そしてなぜ死んだ(殺された?)のか。今は修道士となった元陶工のルアルドが疑いをかけられるが……。ピーターズさんの女性を描く筆が冴えます。

修道士カドフェル18『デーン人の夏』/エリス・ピーターズ
☆かつてカドフェルの助手を務め、今はリッチフィールドの司教のもとで修行を積んでいるマークが立派になって再登場!カドフェルはマークとともにウェールズへ赴き、グウィネズ領主オエインとその弟との争いに巻き込まれることに。マーク懐かしいし、ヒロイン・ヘレズも魅力的だけど今一つお話に入り込めませんでした(^^;)

(全巻読了してしまうのがもったいなくてしばらく読むのを中断していました。そろそろ再開します。)