はい、ルパンシリーズ読破に向けてがんばっております。都合によりリンクはハヤカワ文庫ですが、実際に読んだのは偕成社の完訳ルパン全集。

『813』でもルパンは強敵相手に大変苦労していましたが、今回も大苦戦。2作続けて読むと「ルパンって実はたいしたことないんじゃないの?ルパンを翻弄できるだけの知恵と力を持ったヤツがいっぱいいるじゃん!」と思ってしまうほど。

もちろん最後にはルパンが勝つんだけど。

さすがのルパンも今回はもう諦めかけてたもんねぇ。ギリギリで、それも「たまたま」なんとかなったという感じで。

最後に「運」を味方に引き入れる、それこそが「真の強さ」なのかもしれないけど。その「偶然」をしっかり掴んで利用できるんだもんね。

可愛い部下の処刑期日が迫る中、「水晶の栓」の謎を追うルパン。「ついに!」と思ったらやっぱり「まだまだ!」があるし、読み始めると止まらない。

フランスで実際に起きたパナマ運河疑獄をモチーフにしていて、エンターテインメントだけでない、社会派の側面も見せるルブランさん。スエズ運河を成功させたレセップスさん、最後は失意のうちに亡くなっていたとはな……。

ルパンの惚れっぽさは相変わらず健在。みなしごと未亡人の守り神だからな!

そして守り神は決して「一人のもの」になってはいけないのだ。今回もお別れだぜ、ベイベー。って、ルパンはフランス語か。なんて言うんだろうな。未亡人だからマダムでいいのかな?



打って変わってこちら『ルパンの告白』は短編集。粋でお洒落なルパンが楽しめます。長編で強敵に苦戦するルパンよりこちらの方がより「ルパンらしい」と言えるかも。怪盗というよりむしろ名探偵だよね-。まぁ「冒険家」という肩書きが彼には一番ふさわしいんだろうけど。

短編はアイディア勝負。9編どれも面白くてルブランさんすごいです。

中で私が一番気に入ったのは「地獄の罠」。なんとルパンはただのおばちゃん(と言っても生業は掏摸だけど)の罠にはめられ、絶対絶命のピンチ。

「怪盗のなかの怪盗、人をよせつけず、姿さえ見せないことを誇りにしているルパンともあろうものが、こうして女子どものかけた罠にはまってしまったんだ!」 (P131)

やっぱりルパンって実はたいしたことないんじゃ(笑)。

しかーし!

我らがルパンはどんなピンチも切り抜けるのだ。それも小細工や策略なんかではなく、ただその「男っぷり」で勝ってしまうのだ!

……そう、ルパンに好意を持ってしまった女の子が助けてくれるんですよ。ルパンはただみっともなく捕まって、自分じゃ何の手立てもなく、なすがままなのに、敵側の子が寝返ってくれるの!

そんで最後に自分の顔を鏡でながめながらルパンは言う。

「しかし、こういうことなのかね」と、ルパンはつぶやいた。「いい男だというのは!……」 (P152)

かーっ、もうルパンったら!!!

おフランスですな。

おフランスですよ。

「ルパンの結婚」もそういう系統の話で。いい男ってゆーのはねー、得だよねー。

でも「いつか王子様が」と夢を見て33歳になってしまった女の子のところに天下のルパンが忍び込んで婚約指輪をはめてくれたりしたらさー。もうそりゃたまんないよね。その夜の思い出だけであとは一生生きていけるよ。

生活のために好きでもないぱっとしないいとこと結婚するのに比べたら、ルパンと結婚するなんてどんだけファンタジーか!

たとえそれが彼女のお金目当てで、別にルパンに見初められたわけでも、実際にルパンと結婚生活を送るわけでもないとしたってさ。むしろルパンと生活を営むのは大変に違いないし。

しかし、ルパンを見上げたアンジェリクの目があまりにも澄みきって誇りにみちていたので、こんどはルパンのほうが赤くなった。

夢を食べて生きていた女の子は意外に強い。

ルパンの妻となり、ルパンを救って、ルパンに顔を赤らめさせた。

アンジェリクは自分を「利用され、一生をめちゃめちゃにされた不幸な女」だなんてこれっぽっちも思っていない。

それもこれも、やっぱりルパンが「それだけの値打ちのある男」だからだよね。

うぷぷ。