※ネタバレあります!これからご覧になる方はご注意ください!!!



 

幕が開いてまだ一週間経ったばかりの雪組公演、観てまいりました。「まだ」と言っても、昔みたいに1か月半ではなく1か月で終わっちゃうわけですから、「もう4分の1終わった」とも言えるのですが。

『仮面の男』、言わずと知れた「鉄仮面伝説」のお話です。もちろん『スケバン刑事』じゃなくて『三銃士』の方ですよ。フランスの方ね!(誰が間違うかよ)

実際に存在したという謎の仮面の囚人、もしもそれが太陽王ルイ14世の双子の兄弟だったら…?というモチーフにお馴染み三銃士&ダルタニアンが絡み、大変面白い舞台になるはず……なんだけども、あれ……?

なんというか、微妙でした。

全然面白くないわけじゃないけど……よけいな場面が多い。のっけから水戸黄門出てくるんだもん!

「まず歴史背景をちょっと説明しましょう」っていう部分で、アントワネット様達と並んで「日本ならこの時代」と黄門様御一行が出て来る。別にいいけど……全然ダメなわけじゃないけど……あのシーン長すぎる!

三銃士達が無銭飲食しようとする場面も、「看守長は牢獄の指揮者」という場面も、「一大ページェント」も、それ自体が悪いわけじゃないけど、長すぎる。多すぎる。

プログラムを見ると作・演出の児玉先生が「あの時代の人は今の私達から見ればけっこう滑稽だったかもしれない。他のこの手の作品と違う印象を持たれたとしたらそれはわざと。そーゆー演出意図」みたいに書いてらっしゃる。

いや、そりゃコミカルなシーンがあるのはいいけどさ、必ずしも重々しく暗いお話にしなくてもいいけど、でもこれ、トップである桂ちゃんがルイ14世と仮面の男の一人二役をやる以上、彼らが「主役」なわけでしょ? 運命に翻弄される兄弟のドラマが、多すぎるコミカル場面で無駄にぶちぶち切られて、「表層をなぞっただけ」みたいになっちゃってる。

だって三銃士の方が目立ってるもん……。

それでなくても「仮面の男」の方は「たまたま正体を知られて救い出されて」で「受け身」なのに、三銃士がドタバタ騒いでたらさ……。

最初に「仮面の男」が出て来る場面も、「いよいよだぞ!」ってこっちはわくわくして待ってるのに、「看守長は指揮者♪」って歌い出して長い長い。そりゃ若手男役さん達もいっぱい出してあげた方がいいけどさー、トップは桂ちゃんなんだしー。

影絵や「人間ミラーボール」など、仕掛けも楽しかったけど、色々詰め込みすぎてドラマが薄っぺらくなったのは否めないと思う。児玉先生留学帰りであれもこれもやりたかったんだろうけどさ。それならもうちょっと違う題材でやれば良かったんじゃ…。

暴君のルイ14世には暴君なりの悲哀が、そしてずっと仮面をかぶせられ存在を抹消されていた「仮面の男」=フィリップには自分の運命に対する激しい葛藤があってしかるべきで、そこのドラマを私はもっとちゃんと見たかったと思うのよ。

ヒロインとのやりとりも。

ヒロイン、ルイ14世に婚約者殺されて復讐しようとして、それでフィリップとも近づくのに、なんかころっと心変わりしちゃったように見えて。

ルイとフィリップの母親(王太后)も生まれてすぐ引き離されたはずなのになんで一目でフィリップだとわかるんだ、なんで「もう一人の息子」のこと心配しないんだ、おいおいおいおい、って。

最後、二人は入れ替わってルイ14世だった方が「仮面の囚人」になる。彼がどんな暴君で悪いやつだったとしても、それで「めでたし」にしてもいいのか?って思っちゃうし。「同じ目に遭わせてやる!」だったら何も解決しないじゃん。

もちろんことは「国王」なので、他の国や権力の座を狙う貴族達につけ込まれないために「王は一人。別に入れ替わったりしてない」という体裁が必要なのはわかるけど、でもなぁ。そこに何の葛藤も後ろめたさもないのはなー。フィリップは「(囚人とはいえ)不自由のないように」とは申しつけるけど……。

三銃士のドタバタお遊びに振り回された気の毒な兄弟、というふうに見えちゃう。

そもそも三銃士若すぎるし。

ダルタニアンの恋人がフィリップを育てた、ってことは一体ダルタニヤンは恋人と何年前に別れたの?この人達は一体いくつ???とも思うし、なんか色々とツッコミどころが多くて。

三銃士の無銭飲食「How To Succeed」も、夏に雪組さんがミュージカル「How To Succeed」をやったのと掛けてるんだろうけど、フランスなのに…。

三銃士の未涼さん、緒月さん、蓮城さんは良かったけど。未涼さんの顔も声も好きだし、緒月さんは明るいキャラクターが良かった。無駄に目立ってる看守長は沙央くらまさん。前の『ロミオとジュリエット』の時乳母をやった人だよね。注目の男役さんだな。

でももっと桂ちゃんが見たい……。

 

一転、ショー『ROYAL STRAIGHT FLUSH!!』の方はなかなか楽しめました。わーっと人数の多い場面が多く、最初から最後まで賑やかな雰囲気。

途中の戦隊モノ風名乗りにウケました。

プログラム見ると「雪組!派手に行くぜっ!!」という言葉とともに「ゴーカイジャー」の文字が。まさか宝塚のプログラムでゴーカイジャーの名を聞くことがあろうとは。

作・演出の齋藤先生は子どもの頃から戦隊ファンらしい。なるほどそれであの名乗り。「最初からクライマックス」だったしなー(それは戦隊じゃなくてライダー)。

いっそ最初から最後まで「宝塚戦隊ドリーム5」で怪人と戦っちゃったりしてくれると嬉しかったかも(笑)。ジョーカーは通しで「ジョーカー」だけど、ジャックやキングはよくわかんないシーンも多かったから。

賑やかで楽しかった割に印象的なシーンが「戦隊の名乗り」だけだったのはやっぱりあれかな、こっちも「詰め込みすぎ」だったのかな。足し算だけでなく「引き算の美学」もあると良かったのかも(偉そう)。

桂ちゃんがA席付近まで来てくれたり、最後の桂ちゃんの羽根も素敵だったし、お芝居で欲求不満だった分は取り返したけどね。

桂ちゃん、キュートだけどけっこう濃くてキザで「男役!」って感じでいいのよね。

プログラムのショーのメイク、ハッチさん(夏美よう)にちょっと似てる。濃ゆい(笑)。

お芝居の方も、実はフィリップよりルイ14世の方が桂ちゃんには合ってる気がした。すんごい悪い役とかやってほしいなー。トップになっちゃうとなかなかそーゆー黒い役はさせてもらえないけど。