橋本治
『橋本治と内田樹』/橋本治、内田樹
内田センセのblogで「もうすぐ橋本治さんとの対談本が出る」という話を聞いて以来、まだかまだかと心待ちにしていた。
やっと、先月27日に発売になった。
その名もずばり『橋本治と内田樹』。
ほんまにそのまんまですね(笑)。
対談自体は、実は2005年の春に行われたらしい。
それが、3年間ほったらかしにされて(?)今頃やっと単行本になった。
なんでもっと早く出さないのよ!とも思うけれど、2005年や2006年じゃ私はまだ内田センセのことを知らない。
今でこそ、「お二人の対談本なんて、まるで私のための企画だわ♪」と思えるけれど、対談当時だと「内田さんってどーゆー人だろ?」だった。
だから、私が内田センセのことも好きになるまで待っていてくれたのかもしれない。そういうことにしておこう(笑)。
私が内田センセのことを知ったのは毎日新聞のコラムで、「この人面白いな」と思ってblogを拝見するようになった。そうしたら内田センセは『のだめ』も読んでるし、橋本さんのファンでもある。
「そーか、なるほど。私の“人を見る目”もなかなか確かではないか」(爆)。
その後、名越センセを「いいな」と思ったら、名越センセと内田センセの共著本があったりするし。
「やっぱり、“好き”に引っかかるものはちゃんと繋がってる」というのを改めて確信させてくれたのが、内田センセの「橋本治好き」だった。
もう、内田センセの「まえがき」だけでうるうるしちゃったもん。
「橋本さんと共著が出せてホントに嬉しい」っていうのがね、わかるから。
っていうか、「いいなぁ、内田センセ。羨ましい」って(笑)。
私だって『桃尻娘』を読んで以来二十年来の橋本ファンで、かれこれ10年ぐらいサイトで橋本さんの本の書評書いてるのに。いいなぁ、内田センセ、ずるいな(爆)。
だから本文に入ると、私の頬は緩みっぱなし、電車の中とかで読んでたら絶対「変な人」と思われるだろうな、っていうぐらいにやにやしちゃって。
これ、「対談」なんだけど、テーマは「橋本治」なんだよね。
内田センセが「聞き手」に回ることによって、「橋本治の謎に迫る」みたいな。
「内田センセが対談形式で書いた橋本治論」。そんな感じ。
「まえがき」で内田センセも、「これが後世の『橋本治研究家』たちに資料として引用されることがあれば」というふうに書いてらっしゃるし。
橋本さんの文学の秘密を解明する、橋本さんの思考回路を明らかにする、というような内容なので、橋本治ファンには楽しいんだけど、「橋本さんをよく知らない内田ファン」にはもしかしたらそんなにも面白くないのかもしれない。
橋本さんのこれまでの著作に関する「あれはナントカでしたよね~」という話なんて、やっぱり読んでないとあんまりピンと来ないだろうと思うし。
もちろん、橋本さんの「秘密解明」の過程で、お二人の「世の中のもろもろについての考え方」っていうのが語られるから、それを読むだけでも十分刺激的で楽しいとは思うんだけど。
お二人とも、稀有な思考能力の持ち主だから。
ねぇ。
世の中にはすごい人がいるもんだよね、ほんと。
橋本さんと内田センセの思考回路は、実はかなり違って、内田センセの相槌を、「いや、そういう意味じゃなくて」って橋本さんがひっくり返しちゃうところも多い。
そーゆー、「すごさの違い」っていうのも面白いな。
やっぱり、橋本さんの方が独特。より、「常人ではない」(笑)。
『桃尻娘』シリーズの中に、「……。」がずーっと続くすごい個所があるのね。それって、ある男の子の内省部分で、昔それ読んでほんとびっくりして、「男ってこんなに何も考えてないんだ!」とかって思ったんだけど。
今回その「……。」の秘密も明らかにされています。
単行本と文庫では「……。」の長さが違うんだって。段組が違って、見開きで見える分量が違うから、原稿と雑誌掲載時と単行本と文庫で4種類全部変えてるって。
うぉぉぉぉぉ。
そこまでやるか。
さすが橋本さんだよなぁ。
あの「……。」、頭でっかちで「言葉ばっかり」の私にはホント衝撃的だったのよ。男に限らず、女だって頭の中が「……。」な人って、きっといる。でも当時の私にはそーゆーことが想像もできないから、「言葉のない人がいるんだ」っていうのがまず衝撃で、それを「小説」という「言葉の表現」において表現してしまう人がいるっていうのが「うぉ、すげぇ!」だった。
その部分、男の子の「一人称」のはずなんだもんね。「一人称」で「小説」やろうと思ったら、その「私」とか「ぼく」って、すごい饒舌なはずじゃん。やたらに説明してくれないと、「お話」になんないじゃん。
なのに見開き一面の「……。」だったりするんだから。
あの「……。」にヤラれて、橋本治ファンになった。
ということを、読んでると言いたくなる。
「私も混ぜてくださ~い」と(笑)。
頭の中で始まる「妄想三者対談」(爆)。
こーゆー方々と渡り合えるだけの丈夫な頭と足腰があったら、と本当に思います。
でも、読んでるだけでも幸せ。
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