昨日、滋賀県立近代美術館で開催されている『葛飾北斎展』 を親子3人で見に行ってきました。

北斎と言えば、浮世絵。
「富嶽三十六景」等の「版画」が超有名なのですが、今回は肉筆画もあって、「へぇ、こーゆーのも描いてたんだ」と思いました。
当たり前やけど、肉筆画もめっちゃうまいです(笑)。

すごいなぁ、なんてうまいんやろ、と当たり前のことにいちいち感心して見てました。

でも浮世絵というか版画の方は、独特のデフォルメというか、「タッチ」があると思うのよね。
「北斎」の「絵」ってそっちしか見たことないから、「普通に描いてもすごくうまい」って(笑)。
もちろん、版画は版画で構図、デフォルメ、色、すべてが素晴らしいし。

北斎自身も素晴らしいけど、あれは「版」を彫った人がまたものすごーく素晴らしいと思う。
なんであんな繊細な線を彫れるのか。
字だって、流れるような書体でしょ。

普通にかくかくした字を彫るのだって大変なのに、なんであんな字を「版画」でできるかな。

江戸時代の読み本って、みんな「版画」のはずよね、と思うと本当に「職人の腕」に感嘆する。

「浮世絵」になると「多色刷り」で、色の数だけ版も彫るわけだし、北斎がどんなに素晴らしい「元絵」を描いても、それを再現できる「版職人」がいなかったら、あーゆー作品は生まれなかったはずよね。


北斎は読み本の挿絵も積極的に描いていたらしく、「椿説弓張月」の版本なども展示されていた。
江戸というのは当時の世界都市の中でもかなり文化程度が高くて、清潔で、庶民の識字率も高かった。
なるほどなぁ、と思います。

こんな本を多くの庶民が手にしていたんだなぁ、と。

今となっては「北斎」をはじめとする浮世絵は「芸術作品」だけど、当時は「売れっ子漫画家」みたいなもんだったんでしょうね。

去年見に行った狩野永徳なんかは権力者お抱えの絵師で、庶民がその作品を目にする機会はきっと少なかったろうと思う。翻って北斎の方は、庶民にウケてこそなんぼ、という作品だったでしょう、きっと。

「百物語」の「提灯お岩さん」なんか、「ゲゲゲの鬼太郎」に出てきても全然おかしくない。
日本人の「マンガ的表現」に対する感性は根が深いと思ってしまう。


北斎は長生きで、90くらいまで生きたらしい。
81歳とか82歳で描いた作品も展示されていた。
「画狂老人」と署名されているのが楽しい。
80過ぎてまだまだ現役、売れっ子作家。

すごいね。


で。

近代美術館の「常設展」の方もちらっと見ました。

「近代美術館」なので、「現代美術」が置いてあるわけなんですけど。

全っ然、わからん!

ただ灰色に塗ってあるだけの壁みたいのとか、テキトーに絵の具を塗りたくっただけにしか見えないものとか。

思わず息子に、「こんなんで美術館に飾ってもらえんねんで。あんたもなんか描いてみ」と言ってしまった(笑)。
現代芸術は何をもって「いい」「悪い」を決めるのでしょう。
さっぱりわからんわ。


ついでに隣の県立図書館へ寄って、橋本治さんの『江戸にフランス革命を!』を借りる。

早速ぱらぱらめくったら、北斎に関する言及もあって、なんか嬉しかった。読むのが愉しみ (……『新しい太陽のウールス』を読んでしまわないことには手に取れないのだ。ううう……)