(1巻のレビューはこちら→『機動戦士ガンダムUC』/福井晴敏
3巻のレビューはこちら→『機動戦士ガンダムUC③赤い彗星』/福井晴敏

4巻はそれほどでもなかったんだけど。

5巻は面白かった!

副題が「ラプラスの亡霊」ということで、「ラプラスの箱」の謎にちょっとだけ近づいたような。

この謎の「ラプラスの箱」を開ける「鍵」がユニコーン・ガンダムに仕込まれているということになっているんだけど、「箱」が何を意味するのか、今もって明らかにされていない。

でも、地球連邦政府の最初の首相官邸の名前が「ラプラス」であり、宇宙世紀開始を目前にした初代首相の演説が5巻で再現されて、なんとなく、「箱」って実はスペースノイドを肯定するものなのかな、という気も……。

ジオンと地球連邦の戦争って、そもそもは「アースノイド(地球に留まる人々)」と「スペースノイド(宇宙で生活する人々)」の争いであって、それはずーっと「シャアの反乱」でも続いて、その3年後という設定の『UC』の世界でも続いてる。

「地球連邦をひっくり返す力」を持つと言われている「箱」の中身って、「棄民政策」だと言われていた宇宙への移民が、実は「地球に残っている人間こそが棄てられた」っていう話だとか……ちょっと、単純にすぎるかな???


地球連邦初代首相直系の子孫であるリディが父親から「箱」の秘密を打ち明けられて、でも肝心のその内容はもちろんまだまだ書かれなくて、相当なショックを受けたリディだけが描写されるんだけど……。

えーい、まったく気を持たせるな、福井さん!!

地球連邦と、「箱」を持つことによって影響力をふるってきたビスト財団。そしてジオンの残党。
それぞれの御曹司が交錯している。
地球連邦の御曹司がリディ、ビスト財団の隠された御曹司が主人公バナージ。
そしてジオンの唯一の正当な末裔ミネバ・ザビ。

ホントは「ジオン」の正当な末裔はシャアやけど、表向きにはミネバやもんね。

「やらせはせんぞ!」と妻子を守って散っていったドズルさんも、まさか自分の娘がこんなふうに立派にヒロインになるとは思ってもみなかったろうなぁ(笑)。
ファーストガンダムをリアルタイムで見ていた世代としても、なんかホントに感慨深くって。
あの時の赤ん坊がここまで大きくなったかって(爆)。

生まれながらにして重い宿命を背負わされた子ども達。

特に、連邦とネオ・ジオン双方に知己を得てしまったバナージの闘いはきつくって……読んでてつらい。


すごくこう、「なんとかならないの?」と思えば思うほど「なんともならない」現実を突きつけられるようで、「戦争」というもの、「人間」というものを考えさせられる。


そして。

今回帯の文句が「大人ってなんだろう?」なんだけど。

劇場版『Z』の時にも「大人になってからこれを見るのはせつないな」って思って、『UC』でも、「なんで大人ってそうなんだよ!」といちいち糾弾されてるようで、ちょっとつらい部分もある。
主人公よりも、周りの大人達の方に感情移入しやすくなっちゃったなぁって。
それだけ年を取ってしまったかと(笑)。

5巻でも、「大人の生き様」にほろっとさせられた。

「でも、彼らに未来を考えてもらうためには、現在という時間を背負って歩く人間が必要です。現実と同化してしまった、我々のようなつまらない大人が」

うっ、泣けるわ

福井さんったらホントにお上手なんだから。
このセリフを言われるダグザ中佐、最初からけっこう好きなキャラクターだったんだけど……38歳。
年下やん[E:sweat02]

ものすごい「大人」な感じやったのに……もうみんな年下なんやから……かなんわ、ほんま。

「つまらない」のは承知の上で、子ども達に何かを託せる「ちゃんとした大人」にならなきゃな。