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しつこくシャアの話。

ずるくてなさけないおぢさんになっている『逆襲のシャア』は、若い部下に
「アムロにララァを取られたから、それでこの戦いを始めたんだ」
と言われている。
また、
「ララァ・スンという大佐の寝言を聞いた女はたくさんいる」とまで言われてしまっている。

いいのか、そんなことまで言っちゃって。

っていうか、そんなことまでバレバレになっちゃってるのか。

ララァという女がいて、その女がアムロとシャアで取り合いになった、ということを一体誰がばらしたんだろうか?
ララァがシャアの恋人でもあった、ということは一年戦争当時において、周囲の人間はまぁ知っていたことではあるのかもしれない。
でもララァとアムロがあーゆー出会い方をして、そしてララァがあーゆー死に方をして、シャアが「アムロにララァを取られた」と思った、ということは、周りの人間にはあずかり知らぬことではないの?

あの戦場にいた人間のうち、ニュータイプの素養を持った人はララァの意識を感じたかもしれない。
シャアの嫉妬も感じたかもしれない。
でもそんなこと吹聴するかなぁ。

シャアが寝言で「ララァ」と言ったので、女が「ララァって誰よ!」と問いつめて、それでシャアが自分からしゃべっちゃったのか?

まぁ、誰がばらしたのかはともかく。

「女を取られた腹いせに戦争をしている」と言われてしまうシャア。
映画の中で、実際シャアはアムロを倒すために戦っているように見える。スペースノイドの実情を理解しないアースノイドを粛清する、という「大義」はもちろん嘘ではないんだけれども、根っこにはアムロに対する「逆恨み」がある、というふうに。

「逆恨み」というか、男としてアムロより「上」に立ちたいとか、「アムロという存在」と決着をつけないと自分はどうにもならない、みたいな。

そんな個人的な理由で「核の冬」なんか起こされたらたまったもんじゃないなぁ、と思うけれども。
戦争になって、いっぱいいっぱい人が死んでるんである。
その根っこの原因が、「女を取られたから」だなんて。
みんな何のために死んだんだ。

でも。

そーゆーのって、大いにありなんだろうな。
個人的な動機がまったくない、「理想」とか「理念」だけを掲げた人間なんて、超うさんくさい。

シャアの周りに集まって、ネオ・ジオンの兵士として戦場に散る人間達だって、やっぱりそれぞれに個人的な理由で戦ってる。「国のため」なんていう抽象的な理由ではないだろう。
シャアという人間が好きで、褒められたいから、とか。単純に金や出世のためとか、家族を助けるためとか……。
それはもちろん連邦側も一緒のことで。

もっともらしい理屈を並べられるより、「俺はあいつの敵(かたき)を討ちたいんだ」と言われる方が、協力しようって気にもなるのでは。
「身にしみる」ということは大事なことで、だから「身にしみない」理想論ばかりで革命を起こそうとするエリートは失敗する、みたいな……。

「なさけない」けど「人間くさい」な、シャア。
むしろアムロの方が超然としてるのかも。

『ガンダムUC』のフル・フロンタルがもしシャア本人だったら、「まだやるの?」という気がする。
おまえ、いい加減にしろよ、みたいな(笑)。
戦争ではない、なんか別のやり方を考えてるんだったらいいけど、同じことを繰り返すだけなんだったら進歩がない。

でもまぁ、「愚民をすぐに賢くする」こともできず、話し合いで解決しようにも相手は「聞く耳を持たない」。
どのような手段がありうるのでしょう。
「おまえみたいに急がなければ」とアムロは言うけど、現に目の前で苦しんで、「新しい世界」が開かれる前に死んでいく人は多いのだものねぇ。

「話せばわかる」だけでも、「戦争は良くない」だけでも、解決しないのよねぇ。