『わからないという方法』『上司は思いつきでものを言う』『乱世を生きる』に続く、橋本さんの集英社新書第4弾です。
よほど前3作の売れ行きが良かったんでしょうかね。
確かにどれも面白かったし、新書だから読みやすいし。

この『日本の行く道』も、大変読みやすいです。
橋本さんも親切になったな、という感じがする(笑)。
「資本主義の行き詰まり」とか、「工場制手工業の復活」とかいうテーマはすでに『ぼくらの資本論』等で語られたことでもあるし、ずーっと橋本さんの著作を読んでいる私にとっては特に目新しいわけではない。
でも、そのテーマを現在の状況に照らし合わせて、よりわかりやすく、「橋本調」に慣れていない人にも読みやすい文章で書いてある。

前半の教育に関する部分は、本当に「今の状況」を読み解いたもので、非常に興味深かった。
「いじめ」とか「自殺」とか、子供の世界、学校の世界に限らず、ここは是非多くの人に読んでもらいたいと思う。
学習指導要領をいじっても、「いのちの大切さ」なんてものを校長先生が涙ながらに語っても、「いじめ」はなくならない。
結局問題は「社会のありよう」なんだもの。
学校の中だけじゃなく、日本は大人も「自殺大国」なんですから。

「行き場のなさ」「思いやりのなさ」「“育てる”ということを面倒くさがって、なんでもかんでも“自立”“自己責任”でほったらかす」……。

この前半部分を読んでて、「本当にその通りだな」とうなずくと同時に、「どうして誰もこういうことを言わないんだろう」と思った。橋本さん以外にこういう読み解き方をしてくれる人がいないのはなんでなのかと。

後半部は、「日本を1960年代前半に戻そう」というお話。
「いじめ問題」も「環境問題」も、「資本主義の行き詰まり」も、「産業革命以前に戻せ」ばなんとかなる。
「産業革命以前」はまぁ無理だから、「1960年代前半に戻そう」。

まずとっかかりに「超高層ビルをぶっ壊す」という話が出てきて、ここがまたとても面白い。
「超高層ビルをぶっ壊して、中国を脅す」
中国は「それはもう古い」に弱いから、日本が「超高層ビルは一極集中の象徴だからもう古い」でビルを壊し始めるとうろたえる。
「なんであれ、フェイントをかけた方が勝ちだ」

笑ってしまいました。

笑ってしまったけど、非常に正しいやり方だと思う。
右肩上がりの成長なんてこの先もうあるわけないし、資源の問題からも地球温暖化の問題からも、このまま全世界が豊かな「先進国」になるなんて無理なんだもん。
「先進国」の豊かさレベルを何十年か昔まで引き戻して、「そこそこ」に生きていくより他はない。

いつまでも「景気景気」って言ってたってしようがない。
もうそんな考えでは立ち行かないって、きっとみんな気づいてるんだろう。
でもやっぱり一度手にした豊かさ、既得権益を放り出すのは難しいから、知らんぷりして「景気が上昇しさえすれば」って言い続けてる。

うん、後半部分も、是非大勢の人に読んでもらいたい。
新しい年の初め、みんなで『日本の行く道』を考えましょう。