おととい、全巻読了してしまった。
ああ、読み終わっちゃってさびしい……。

「結局“天上鬼”の力ってどこから来たものだったの?」という多少のひっかかりは残ったものの、全体としては素晴らしい物語、素敵なラストシーンだった。

反則的に強くてかっこいいヒーローに対し、ヒロインは平凡な女子高生。彼女のキャラクターを作るにあたって、作者のひかわさんは「人は結局、本当に等身大で生きることができた時、最大の力を発揮するんじゃなかろうか」と考えたらしい。
そう考えた時、点でしか見えてなかった話がぱーっと動きだしてくれたのだとか。

このお話は異世界ファンタジーで、「光」と「闇」の闘いというのが最後描かれるけれども、その「光」とか「闇」とかいうのは、人間とはかけ離れた超絶的な「神様」とか「悪魔」とかいうものではない。
人間の中にある「光」と「闇」の闘い。
人の“思い”こそが世界を救う光になるのだ、という感じになっている。

そこがすごく、私好みだ。
ずっと私が書きたかった物語のテーマと、とってもかぶっている。

等身大で生きるのは難しい。
「本当はこんなはずじゃないんだ。自分はもっと違うものなんだ」とついつい現実逃避をして文句ばっかりの日々を送ってしまう。
『彼方から』にはそーゆー、「私はこんなところで終わる人間じゃないのよ!」と美貌と才能をひけらかすおねーちゃんが出てくるが、とても見苦しい。

昔は私もしょっちゅう「本当の私は作家になっているはずなのよ〜」などと現実逃避をしていた。
きっととっても見苦しかったと思う。

何年か前から、「小説の展開をどうしようと考えている私も私なら、今晩の献立に頭を悩ましている私もやっぱり私、Gackt様にキャーキャー言っている私も私で、子どもと耳鼻科で2時間待ちをしている私も私なのだ」と思うようになった。

まったく華々しくもないし、子どもの頃の夢もかなってない。色々と不本意なことは多いけれども、それは結局は自分が選び取ってきたもので、文句を言って否定してもしょうがないのだなぁと思う。
今の自分を嫌だと思わなくてすむように、前向きにがんばっていくしかないのだ。
(↑と言ってももちろん現在もしょっちゅう文句はたれている)

「それぞれがそれぞれに
与えられた自分の持ち場で
生き生きと頑張って
微力で大きな力を
世界に拡げてるよ」

というヒロインのお兄ちゃんの言葉で、『彼方から』のエピローグは幕を閉じる。

ひかわさん、素敵な物語をありがとう。