(※以下ネタバレあります。これからご覧になる方はご注意下さい。
 また、鑑賞後だいぶ時間が経ってから書いております。記憶違い等多々あると思われます。ご容赦ください。)



『仮面ライダーエグゼイドトリロジー』を観る前に、『文豪ストレイドッグス』の映画も観てました。

エグゼイドの方は上映時間1時間ほど。そのためだけに京都へ行くのも何やらもったいなく(『ガンダムTHE ORIGIN』とかおおむねそのためだけに行ってますけど(^^;))、連チャンいたしました。

『文豪SD』、原作は読んでなくてアニメしか見てないんですが、1期目は敦くんのウジウジがあまりに面倒くさくて、「んーーーーー、予想より面白くない……」。
2期に入ると織田作が格好良くて、でもすぐ死んじゃって、「ずっと織田作なら良かったのに。敦くんイラね(´・ω・`)」ぐらいに思ってました。

うん、この劇場版でも敦くん面倒くさかった。

まだ覚悟ついてなかったのかよ、と。

それに引き替え鏡花ちゃんの男前なこと! 鏡花ちゃんいなかったら敦くんあっさりゲームオーバーしてたんじゃ。

世界各地で異能力者が「謎の自殺」を遂げる事件が発生、武装探偵社もその調査に乗り出す中、横浜が「霧」に覆われる。その「霧」の中では異能力者の「異能力」が分離し、持ち主に襲いかかる。そう、各地で起きていたのは「自殺」ではなく、「自らの異能力によって殺害される」事件だったのだ。

その中心にいるのは渋澤龍彦という男。そしてなぜか太宰がそちらに寝返ったという話。

探偵社の面々それぞれが、自分の異能力との闘いを強いられる中、敦と鏡花は澁澤たちのいる居城へと向かう。合流する芥川。

もちろん3人とも「分離した自身の異能力」と戦わなくちゃいけないわけです。戦って、勝てば、異能力は戻ってくる。

はずなんだけど。

敦くんだけ戻ってこないのね。

「なんで?」って、見てる人間には「おまえにはまだ覚悟がないから」って丸わかりなんですが。

ずーっと「太宰さんには何か考えがあって」「太宰さんにさえ会えばなんとかしてくれる」みたいに言ってるし、何より彼はまだ、「虎」を「自分」だと受け入れていない。

「虎」のせいで、「異能力」のせいで、忌み嫌われてきた。好きでそんな能力を持っているわけでもないのに、疎まれ、居場所を奪われてきた。敦くんの過去が可哀想なものなのは承知しているけど、でもテレビアニメの終盤で、それなりに過去とは決着をつけて、自分の弱さや「虎」を受け入れたと思ってたんだよね。

決して好きで持った能力じゃないけど、その力があればこそ、守りたいものを守れる。

それが今回かな~りグズグズ言ってて……イライラするよぉ、敦くん。

最終的にはもちろん「虎も自分だ!」ってなるんだけど。そしてその敦くんのふらふらした弱さ、強大な「虎」を飼うにはあまりに脆そうな心とのアンバランスさ、葛藤こそが彼をして「他の異能力者とは違う」存在にしている(と澁澤が思っている)ぽかったんだけど。

はぁ、時間かかるなぁ、ほんと。

善と悪。強さと弱さ。臆病と傲慢。

人の中にはどっちも存在する。「暴力なんて」と思っている人間の中にも、暴力性・衝動性がないわけじゃない。

「臆病な自尊心と尊大な羞恥心」。中島敦の『山月記』ったらこれですもんね。敦くんが「面倒くさい」のも「よく特徴を出してる」と言えばそうなんだけど。

弱さも醜さも、裡に潜む「怪物」もすべて「自分自身」と受け入れて、けれど「怪物」に飲み込まれることなく、なお「自分」として戦えるのか。ただ目をつぶるだけでなく、「いないもの」にするのでなく。

うん。

テーマはすごく好きだし、やぁっと「虎」を「ぼくだ!」と認めて澁澤をやっつける敦くんにはカタルシスを感じたけれど。

長いよ~、そこまでのウジウジにイライラするよぉぉぉ。


一方。

澁澤に寝返ったかと見られた太宰さん。

敦くんが無条件に「太宰さんなら」と思っていたとおり、澁澤を止めるために近づいていたわけですが。

太宰と中也の絆が良かったです!!!

テレビシリーズではどっちかというとお笑い要員というか……格好良さを発揮できてなかった印象のあった中也、取り返してあまりある活躍ぶり。原作知らないし、「あれ?中也ってこういうキャラだったんだ!?」ってちょっとびっくり。

中也の異能力は最終形態(?)『汚濁』を発動すると自分ではもう止められず、死ぬまで暴走する……ということで、太宰さんの異能力「他人の異能力無効化」とセットでないと真に「使いこなせない」わけです。

横浜の街を守るため、そして「あそこに太宰がいるなら」と、『汚濁』状態で突っ込んでいく中也。

澁澤とフョードルに裏をかかれ、毒ナイフで刺されて瀕死の太宰。漂う太宰の体を見つけ、こんちくしょうとばかりその頬を中也が殴りつけたとたん、口の中に仕込んでいた解毒剤のカプセルが割れて――。

こ、これは、大好きな「おまえなら止められると思った」パターンぢゃないですかっ!!!

澁澤たちに死んだと思わせるため、すぐには解毒剤を投入できない。でも中也なら必ずたどり着き、私を殴りつけるだろう、そして中也の暴走状態を止めてやれるのは私だけ……。

うおぉぉぉぉぉぉ、ご馳走様ですぅぅぅぅぅぅぅ。

……でも、毒は解毒剤でチャラになったとしても、太宰さんめっちゃ刺されてたじゃないですか。フツーに重傷だったと思うんだけど、中也と再会後、けっこう元気そうだったよね。防刃チョッキとか着てたのかな。


実は澁澤と敦くんには過去に因縁があって、敦くんはその記憶をずっと封印してました。で、澁澤の方も「失った記憶」というか、「忘れていること」があって。

太宰さんが澁澤側についていたのは、もちろん最終的に横浜を守るという目的もあったのだろうけど、「澁澤を止める=救う」ためでもあったみたいで。

澁澤を救えるのは敦くんだけ。それがわかっていたから、太宰さんはわざと……という感じ。

澁澤とフョードル、そして太宰。強力すぎるがゆえに孤独な彼ら。

「私の予想を裏切るものなど出てこない」と「退屈」して、でもその「予想を裏切るものの出現」をおそらくは求めて異能力をコレクションし、横浜を破壊しようとする澁澤。

続けて『エグゼイド』見てる時に、「澁澤と檀黎斗神っておんなじような感じだなー」と思っちゃいました。「誰かこのゲームを攻略する奴はいないのか!?」って吠える黎斗神と、「私の予想を裏切ってみろ!」と煽る澁澤。どっちも才能ありすぎて、世界が退屈で。

『文豪SD』の方で安吾だったかが「3人の孤独」と言うのだけど、凡人には「なんでもできるがゆえに退屈してしまう天才」の気持ちなんてわからない。レベルが違いすぎて、互いに共感できない。

太宰は織田作に、「同じなら、いいことをした方がいい」みたいに言われて、ポートマフィアから武装探偵社へと身を翻すけど、「相手の異能力を無効にする」といういわば「反則技」の持ち主にとっては、本当に「どっちでも同じ」なんだろうなぁ。

そんな力を持っている以上、常にその身は他の異能力者たちに狙われるわけで、でもそんな異能力者の攻防なんか、「無効にできる」太宰にはきっととても馬鹿馬鹿しくて……。

澁澤の「霧」の中で、異能力は分離する。太宰の「無効化」という異能力が分離して太宰を襲っても、「無効化」なので何も起こらない(はず)。太宰が分離した異能力と対峙するって描写、確かなかったと思うけど。


オープニングも格好良かったし、アニメならではの――そして劇場版ならではの迫力の動きも見応えがあり(たぶんそのせいで『エグゼイド』がよけいちんたらして見えた(^^;))、「敦くんめんどくせー!」以外は楽しかったです。



もらった1週目の入場者特典はまだ読んでおらず。2週目の「太宰 中也 15歳」も今回の「おまえならきっと来ると思った」を見てしまうと気になりますねぇ。追加上映劇場に行けばもらえるチャンスあるけど……わざわざもう1回見に行くかっていったら……。4/21からの追加上映で2週目っていったら思いっきりゴールデンウィークだしなぁ。

あまぞんさん見ると当然売りに出されてたりするけど。いやはや。