ハヤカワ文庫がまたアニメ『PSYCHO-PASS』とコラボして「紙の本を読みなよ」キャンペーンをやってくれたので。

また買ってしまいました。


前回とラインナップが変わってなくて、新しく追加になったのがこれだけだったこともあり、前のキャンペーンで買ったギブスンの『ニューロマンサー』が面白かったこともあり。

この『ディファレンス・エンジン』をわざわざ京都まで遠征して買ったのですが(近所の本屋いくつか回ったけど「紙の本を読みなよ」の「か」の字も見つけられなかった…(・_・、))。

うーむ。

「歴史改変SF」ということで、歴史上の事実や実在の人物のことをある程度知ってないと「改変」の妙を味わえない感じでした。なんか普通のフィクションを読んでるのとあんまり変わらなくて、SFというより冒険小説としてそれなりに楽しめましたが、「おおーっ、これは!」という感動はなかったです。

舞台は19世紀半ばのイギリス。冒頭の章にはテキサス革命で活躍したというサム・ヒューストン将軍が登場。テ、テキサス革命…? 何……?

どこまでが本当にあったことで、どこまでがフィクションなのか。他にも実在の人物はいっぱい出てきて、福沢諭吉や森有礼まで出て来るんですが。

森有礼って何した人だったっけ……。

日本の人物ですら「その人がどういう背景を背負った人なのか」がピンと来ないんだから、外国の歴史上の人物なんて……。

冒頭の章のヒロイン(?)シビルはベンジャミン・ディズレイリの小説『シビル、または二つの国』をモチーフにしているそうで、シビルの情夫であるミック・ラドリーの名もその小説から取られている。

ということが、下巻の「差分事典(ディファレンス・ディクショナリ)」を読むとわかるようになってます。

別にわかんなくても読み進むのに問題はないけど、最初から知ってたら読みながらニヤニヤしちゃうんだろうなぁ。『シビル、または二つの国』の邦訳は残念ながらないみたいですが。

タイトルに使われている「エンジン」は本文中では「機関」と訳されていて、蒸気コンピュータのことを指す。「機関(エンジン)点刻の顔写真」とかいうのはコンピュータ(というかプリンタ?)によるドット印刷のイメージでしょうか。

蒸気機関がすごく発達して蒸気コンピュータが稼働し、ガソリンではなく蒸気で動く自動車が街を走っている。コンピュータはトランプのような大きさのパンチ・カードでプログラムを組まれ、ミック・ラドリーは変わった素材でできたカードの束をシビルに見せる。

何か見たこともない乳色のものでできていて、紙でもなければガラスでもなく、とても薄くて光沢がある。(中略)それには三十余りもびっしりと、列をなして丸い穴があいていた。穴といっても、質のいい真珠ボタンにあいている穴と同じぐらい。 (P57)

二章になるとガラっと雰囲気が変わって、シビルではなく恐竜化石の発掘者として名高いらしいマロリー博士が主人公に。

でも「謎のカードの束」は健在。というかこの「カードの束(つまりはプログラム)」の奪い合いがストーリーを動かしていて、マロリー博士は襲われたり、マフィアのような一団が陣取っている場所へと殴り込みをかけたり大活躍。

うん、マロリー博士の冒険活劇としてそれなりに面白く読めちゃったけど。

でも「だから何」なのかよくわからない……。

唐突にマロリー博士の冒険は終わって、またシビルが出てきたり。全編に共通して登場するのはローレンス・オリファントという人で、この人「生麦事件」で日本人に刀傷を負わされた方なんですよね。

と思ってググったらあれ? 生麦事件じゃなくて別の事件でした。「英国公使館が攘夷派浪士に襲撃され、オリファントは馬の鞭で応戦した」とWikiにイラストまで掲載されています。

どっちにしても全然お名前を存じ上げない……。

解説を読んでやっと「そういうことだったのか」とわかったり。

本文読んだだけでわからないのは私が馬鹿だからなのでしょうが、最後に蒸気コンピュータがああなるのならもっとコンピュータを中心に据えたお話にしてくれた方が……。マロリー博士の冒険、特にシビルと一緒に住んでいた娼婦とのアバンチュールにいっぱいページ割かなくても。

コンピュータはそれさえも見ていた、ということなんでしょうけど。

それを踏まえてもう一度読み返せば、色々とまた景色が違って見えるのかもしれない。

うーん。

「小説の面白さ」って難しいなぁ。