息子ちゃんが「相対性理論について知りたい」と言うので、Amazonさんで検索してこれを買ってみました。

全253ページと薄いし活字も大きく、「入門編でしょ、私には必要ないわ(フッ」とか思ってたんですが、たまたま読む本がなくなって手に取ったら。

これは。

すごい。

「相対性理論」の解説がわかりやすいのはもちろん、最後はインフレーション宇宙論にまで言及、「無から生まれた宇宙」という言葉も出て来て、「え、『宇宙が始まる前には何があったのか?』読む必要なかったじゃん……」みたいな。

うん、ほんと、あれ読む必要、あんまりないと思う。こっちの方が最初から日本語で書かれててわかりやすいし、ものすごくコンパクトに要点がまとめられて、頭に入りやすい。

要点、太字ですもの。

数式の説明ではなく、“「相対性理論」によって導き出されたことは何か”を言葉で説明してくれる。

数式を使わなくてもある程度解説できる「特殊相対性理論」に比べ「一般相対性理論」の方は格段に難しく、「さすがに言葉だけで説明するのは難しい」と断った上で、「まずは一般相対性理論がどんなことを明らかにしたのか知ってください」「流れや感覚をおおまかにつかんでもらえればそれで十分だと思います」ときっぱり。

専門家ではない素人を読者対象にして、いかにわかりやく、また興味を持って最後まで読み通してもらうか、ということをきちんと考えた上で書かれた本だなぁ、と感心します。

それでいて宇宙論まで行くし、突如「太郎の屋根に雪ふりつむ」とか出てきて、文学的でもある。

「ロマンティック時空」という節など

時間と空間。その隔たり。遙かな空間の隔たりが、時間の隔たりなのでしょうか。距離の隔たりより、時の隔たりこそが、真の隔たりなのでしょうか。
「歳月に隔てられけり冬の星」
 (P132)

で締めくくられています。

いや、なんか、外国の方の宇宙論の本とは感性が違うというか、「ああ、日本人だなぁ」としみじみしてしまいます。

別に外国のそういう著者の方が文学的じゃない、ということはないと思うし、章の冒頭に古典からの引用が入ってる、ということも多々あると思うんですけど、科学的に考察しているのについ「宇宙って浪漫だよねぇ…(キラキラ)」となってしまうような、感性の根っこのところがこう、やっぱり違うような。

「監修:佐藤勝彦」となっているだけで、実際に本文を執筆した方がどなたかはわからないし、こういう「文学的な」部分が佐藤さんのご趣味なのか、それとも別の方のご趣味なのかもわからない。

ともあれこの本を書かれた方はすごい、と感心します。

難しいことを素人にもわかるようにかみ砕いて説明するって、本当に頭の良い人じゃないとできないですよねぇ。

佐藤勝彦さんって、インフレーション宇宙論を提唱された方で、昨秋NHKの『100分de名著』でも「相対性理論」について解説されていました。

その時に「光の速度が通常の一千万分の一になっているテーマパーク」というアニメーションが紹介されていましたが、まったく同じ話がイントロダクションに掲載されています。あの「100分で名著」の説明は、かなりの部分この本をもとに構成されたんじゃないかしらん。

この本、1998年初版です。

2013年までに67刷を重ねるというベストセラー。読めばなるほど納得の非常によくできた入門書なのですが、しかし1998年の本に「無から生まれ急成長した宇宙」って書いてあるのになんで今さら『宇宙が始まる前には~(原題『無から生まれた宇宙』)』が大センセーションになるんだ……。

だってすでに1998年の本に「真空というのは、何もない状態ではなく、電子と陽電子が合体して打ち消し合っている状態であり」という話が書いてあり、「このような「無」から、ある確率で「有」が生み出されることも、想像できなくはないでしょう」って書いてあるんだよ。

「最初の宇宙は、神様が奇跡を起こして作ったのではなく、物理学の法則にしたがって、つまり自然現象としてごく当然に生まれてきた、それが明らかになってきたのです」 (P252)

日本だとこれで済んじゃうところが、キリスト教圏だと「神は要らないんだ!私は無神論者というより反神論者だ!」と一生懸命主張しなくちゃならなくなる、ということなのか……。

まぁ、比較という意味では『宇宙が始まる前には~』を先に読んだのは面白かったかも。

引き続き『「量子論」を楽しむ本』も読んでみたいです。