本
『モンテ・クリスト伯』第2巻/デュマ
※以下ネタバレだらけなので、真っ白な気持ちで読みたい方はご注意ください。
(1巻の感想はこちら)
サクサクと2巻目も読み終わってしまいました。
いやー、やめられない止まらない。どんどんと頁を繰ってしまいます。
2巻目では、ついにエドモンが牢獄を脱して、復讐への道を歩き始めます。
1巻目で運命の出会いを果たしたファリア神父が死んでしまって、彼の遺体と入れ替わることで牢の外へ出るのですよね。これ、『レ・ミゼラブル』でジャン・バルジャンが棺に入って修道院を出るあのエピソードを思い出します。
ジャン・バルジャンは危うくそのまま墓地に葬られるところだったし、エドモンの方は地の下に埋められる代わりに海へ放り込まれる。そしてもちろん、そのまま沈んだりせずに生き延びる。
「入れ替わり」が発覚しても、錘付きで海に沈められて生きているはずはない、と思われ、エドモンは帳簿上死者の列に。
ナポレオンがエルバ島を脱出した1815年に投獄されたエドモンが外へ出たのはなんと1829年。14年もの月日が経っていた!
20歳前だったのが、34歳になっちゃってるんですよ。
ああ、俺の青春。
復讐に燃えても仕方ないよね。
ファリア神父と出会ったのが入牢後6年くらいだったので、8年間くらいエドモンは神父の「弟子」だったのですね。ただ運命を呪う以外にすることのない暗牢の中で、ファリア神父から外国語を習い、歴史や科学や社交界のしきたりを習い、一介の船乗り(と言っても20歳そこそこで船長になれそうだったんだから、船乗りとしての能力は高かったわけだけど)だったエドモンは知恵と知識を兼ね備えた傑物になっている。
そしてファリア神父の遺産。
モンテ・クリスト島に隠されていた「宝」もしっかり獲得。
チェーザレ・ボルジアの時代の遺産っていうのがまたすごいわ。信憑性があるんだかないんだかっていう。チェーザレじゃなくてセザールって訳されてるけど。
チェーザレとその父アレクサンデル6世により命を奪われた貴族がせめて財産ばかりは、と隠していたものをファリア神父が「相続」し、牢獄の中で「息子」とも呼ばれたエドモンがさらにそれを「相続」。
自分の才覚で財を成したジャン・バルジャンとはちょっと違うなぁ。(いちいち『レ・ミゼラブル』と比べるなよ)
まぁその後、エドモンは自分の才覚でその宝をさらに増やしている感じだから、裸一貫から始めてもそれなりに出世できたような気はする。ただ、牢獄で14年を無駄にした彼にとっては、「復讐」の原資を地道に稼ぐような余裕はなかったんだろうなぁ。34歳で出て来て、身代築くのに10年かかってたら、仇はさっさと勝手に死んじゃってるかもしれないもの。
で、「元手」を得たエドモンはまず、自分を陥れた人間達が今どうしているのかを調べる。
なんせ14年も経っているのです。エドモン自身、紅顔の美少年(?)から34歳のおっさんになって、自分で鏡を見ても自分だとわからないくらい。
そのことが「敵の情勢調査」には有利に働くのですが(故郷の村を訪れても誰も彼だと気づかない)、さらに彼は変装までして用意周到にカドルッスのところを訪れる。
カドルッスというのはダングラールとフェルナンが「エドモンはボナパルト党」という密告手紙を書いた時一緒にいた、エドモンのかつての隣人。
怪しまれず話を聞き出すための「作り話」や、イタリーなまりやら何やら色々な言語を自在に操っちゃうところやら、なんかアルセーヌ・ルパンを彷彿とさせます。
うん、このノンストップエンターテインメント感、ルパンに通じるわぁ。
カドルッスから話を聞いたあと、かつて世話になった船主モレル氏を救うエドモン。もちろん、自分の素性は明かさず、実に洒落たやり方で。
モレル氏の娘が万一時間に間に合わなかったらどうするんだ、とは思ったけど。
あと、モレル氏を救った財布の置き場所が、かつてのエドモンの家だったってことを、モレル氏は思い出さなかったのかなぁ。まだこれから、「後になって気づいた」みたいな言及が出て来るのかしら。
モレル氏を助けたあと、一気に時間は1838年に飛ぶ。
出獄した1829年から9年も経っちゃってる。七月革命も、『レ・ミゼラブル』で描かれた1832年6月の暴動もすっ飛ばして、いきなり1838年。エドモンもう43歳だよ!
一体その9年の間、エドモンは何してたの…?また後でその頃の話も出てくるのかしら。
ともかくも、1838年。
彼が牢内にいる間に、彼を罠にかけたダングラールとフェルナンは貴族の称号を手に入れ、裕福に暮らしていた。エドモンと結婚寸前だったメルセデスは結局フェルナンの妻となり、アルベールという息子をもうけている。
そして、ローマを訪れたアルベールの前に「モンテ・クリスト伯」を名乗るエドモンがっ!
「将を射んと欲すればまず馬を射よ」じゃありませんが、すぐにフェルナンのもとへ赴くのでなくまず息子に近づくっていうのがあなた!
ぞくぞくしますね。
敵を苦しめるには、その愛する者を奪うのが一番ですから。
ああ、一体どんなふうにエドモンは敵を追い詰めていくのかしら。
ぞくぞく。
(※続刊の感想はこちらから→3巻、4巻、5巻、6巻、6巻続き、最終7巻)
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