ルパンに乾杯!
『813』『続813』/モーリス・ルブラン
やっと「続」を借りてきて、これまた一気読みしました♪
「続」と書いてあると、「続編」のようですが、実際には「813」という一つの物語の前編と後編、第一部と第二部。
「813」で訳されているのが第一部の「アルセーヌ・ルパンの二重生活」。そして続が第二部「アルセーヌ・ルパンの三つの犯罪」。
とりあえず「813」だけ借りてきた私は「えええっ、こんなとこで終わりなのーーーーーっ、ちょっと早く続き続き!」と思ったのですが、原著の第二部は第一部発表から7年も後に刊行されたのだとか。
そんなに待たされたら第一部で何があったのか忘れちゃう……(笑)。
たったの数週間間が空いただけでも「えーっと」って思うのにね。
「813」は「奇巌城」と並んでルパン作品の代表格であり、もちろん私も子どもの頃に読んでたんですが。
相変わらずまったく覚えてなかった(爆)。
いや、「813」にまつわる謎、「813自体の意味」はなんとなく覚えてたんですよ。でもこの作品、「813」といういわゆる“暗号”の解明はたいした主題ではないんですよね。
ルパンと同じく「813」を追う謎の殺人鬼、正体不明のその「誰か」とルパンの追いつ追われつ。「こいつか!」と思ったら「いや、まだだ」、「今度こそこいつか!」と思ったら「いや、おかしい」って、どんでん返しにつぐどんでん返し。
途中で「もしかして…」と当たりがついてくるものの、『奇巌城』と同じく「何回クライマックスが来るんだ?」という感じ。
真犯人にはちょっと納得がいかないし(=あの人に本当にあれだけのことができるんだろうか?)、「狂人の家系」とか今だとちょっと書けないというか、「だからこいつもヤバくて犯人」みたいのは納得していいのやら悪いのやら。
まぁそもそもルパンの「二重生活」が無茶って話はあって、公爵ぐらいになりすましてるのはともかく、何年も警察の人間として普通どころか思いきり活躍しちゃうとかどんだけー。
本人確認がテキトーな時代っていいね(違っ)。
でもルパンのわくわく感ってやっぱりそーゆー、ケータイなんかない、アナログな時代背景にも依っていると思うんだよね。ルパンが新聞に声明を出したりさ。
今となっては色々な「それは無茶だろ」も、100年前のお話だと思えば半分異世界で、ファンタジーとして読めちゃうし。
全部「リアルタイム」だったはずの当時の読者にとっては……「ルパンなら多少の無茶も」だったんだろうなぁ。
「無茶」あってこその“物語”。
つじつまとかリアルさばっかり追求してると面白くなくなるよね。
「時代背景」と言えば、「813」の第二部が刊行されたのは1917年(大正6年)。第一次世界大戦の真っ最中。1918年の終戦を前にして、フランス国民は疲弊していた(らしい)。「813」のルパンはそんな祖国フランスを勇気づけるかのように、かなり愛国心に燃えた活躍をします。
アルザス・ロレーヌ地方やモロッコの話が出てきたり、ドイツ皇帝と渡り合って、「わたしに仕えてみないか」とまで誘われる。
応えてルパン、「わたしはフランス人です」。
一番最後も「フランスのために!」という言葉。
当時のフランス国民はさぞこの“英雄”に喝采を送ったのだろうな。
私は100年後の日本人だけど、ドイツ皇帝相手に「はったり」での大勝負を挑むところなんか、ホント惚れ惚れしてしまいます。
知力、体力、大胆不敵、品のあるユーモア。
そして弱さ。
「だがルパンに、未亡人とみなしごの守り神であるこのルパンに、戦いをいどんだりするからだ!」 (『続813』P246)
って、ルパンは自分で言ってるんですが(思わず苦笑しちまったよ、ルパン)、「守り神」というより、未亡人に「弱い」……。
惚れっぽすぎるよね、ルパン。
そして常に哀しい結末になるというね……。
ルパンが未亡人とみなしごに弱いのは、自身の生い立ちのせいだと思うけど、「冒険」においては抜群の知力を発揮するルパンが、女の子に対して間違った幸せを押しつけようとしたり、乳母のビクトワールに未だ「かわいそうな坊や」と言われてしまったり。
人間ばなれしているように見えてとても人間的なところがルパンの魅力。
さて次はどんな冒険が待っているのかしらん。
わざわざ書庫から出してもらわなきゃいけないのがめんどくさいけど、引き続き『水晶の栓』行くぞー!おー!
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