『彼方から』を大人買いしてから早や5年。その時から気になっていた『お伽もよう綾にしき』、また大人買いしてしまいました♪

定期的に読みふけりたくなるのですよねぇ、ひかわきょうこさんの作品。

いやー、もうやっぱり素敵で読み始めたら止まらない。続編の『ふたたび』まで一気読み。

大人買いの楽しさはこうして一気に最後まで読めるところにありますわね。続きが出るのを首を長くして待つのも楽しいけれど、世界にどっぷり浸ることができる。

この夏のうだるような暑さの中、ひかわさんの描くファンタジーは一服の清涼剤。幸せな気分になれます。

舞台は室町中期。「もののけ」が割と普通に人間のそばに存在した時代。

ヒロインのすずは両親を早くに亡くし、幼い頃から「もののけ」に好かれる体質で、子ども達にいじめられたり親戚から良くない扱いを受けていました。

寂しい子ども時代を送っていたすずが7歳の時、「ととさま」になってくれる人が現れます。若侍の新九郎。修験者である彼は「もののけ憑きの娘を救うてみよ」と言われてすずと出逢い、1年半の間彼女の「ととさま」として「もののけ」との付き合い方(簡単な修験の術)を教えてくれます。

しかしすずと新九郎の幸せな「親子ごっこ」は長くは続かず、妖術師との一騎打ちで新九郎は帰らぬ人に……。

もうこの、7歳と18歳の二人の出逢いのところがたまらないんですよねー。すずは超可愛いし、新九郎はかっこよくて強くて優しくて、「私もこんな“ととさま”欲しいよーっ!!!!!」と読みながらすずに嫉妬(笑)。

いえいえ、とっても微笑ましいのです。

こんな異性と7歳で出逢っちゃったらもうね。大きくなっても他の男になんか目が行かないよね。すごい刷り込み(笑)。

二人は11歳差で。

ひかわきょうこファンなら思い出さずにはいられないダグラスとミリアム。(『荒野の天使ども』)

あれはミリアムが8歳でダグラスが17歳だったっけ?9歳差。

ダグラスと新九郎は黒髪で顔も似ている。性格もけっこう似てるような。『彼方から』のイザークも黒髪イケメンだよねぇ。

ミリアムとすずはだいぶ性格が違って、『彼方から』の典子に近い。

で、ミリアムとダグラスの場合、ミリアムが記憶喪失になることでダグラスの中の「妹のような存在」というのを一旦チャラにして「一人の女性」として現れ直す、ということになるのだけど。

すずと新九郎の場合、新九郎が一旦現世から姿を消してしまい、十年後戻ってきた時に「異界にいたため年を取ってない」という荒業で11歳差をたったの1歳差にしてしまう。

まさに「時間を止めて待っていた」状態。

ずるいなぁ(笑)。

すずと新九郎の「親子ごっこ」→「別れ」→「1歳差での再会でドキドキ」というのももちろん楽しいんだけど、私は断然新九郎よりおじゃる様派。

おじゃる様というのは新九郎がすずに「お守り」として預けていた笛(を模したもの)に封印されていた「もののけ」。

お公家姿で「おじゃる言葉」をしゃべり、新九郎が眉剃って化粧した顔をしている。大変強力な「もののけ」であり、すずのピンチをしばしば助け、大変頼りになる。

カッコいいのだよ、本当に。

ちょっと高飛車で子狐もののけをからかって楽しむところとか大変魅力的。

手にした扇で悪いもののけを消滅させる様、お公家のあの衣装でひらりと舞うように戦うお姿。

麗しぃ~~~~~~♪

またひかわさんの画力がハンパないのよね。

女の子は可愛く、男の子は格好良く、絵が全然崩れてらっしゃらないし、その「動き」の滑らかさ、コマ割のうまさ。惚れ惚れしてしまう。

お話も安心して読める。

なんというか、大変ほっこりと、読み終わった時の幸せ感がね。

全5巻のあと、続編『お伽もよう綾にしきふたたび』も一気読み。

これがまた!

2巻目、土曜日の朝、家人が起き出す前に読んでて号泣。

河童の子のがんばりがもう……涙なしには読めないよぉぉぉ。

全部で7冊読み終え、「ああ、もっと読みたい!」とまた最初から読み返してしまいました。こんなことめったにしないのに。

話の筋全部わかってても楽しい。面白い。

おじゃる様や子狐もののけの五郎太、すずの護法童子である合丸達を他の人々が普通に受け容れているのも良いのですよね。もののけと人が平気で共存している。

もちろん悪いもののけ、「悪霊」には困らされるわけだけど、いずれにせよ「人」のすぐそばに「人でないもの」が当たり前に存在する、その感覚がなんとも羨ましいような。

新九郎やすずは真言を唱え、印を結んで“術”を使う。通っているヨガでは「声」で「場を浄める」みたいなこともするので、あーゆー“術”って決して絵空事じゃないと思うし。

「人」の内部に外界と同じものがあり云々という話や、「とらわれる心を捨てよ」という話も素敵(後者は大変耳の痛い話でもあるけど)。

いやー、ほんと、好きだなぁ。

冬からまた続編の連載が始まるという情報もあり、大変楽しみ。

もっともっとおじゃる様に会いたーい!

扇で「ぐいー」とされたーい!!!(爆)


そうそう、巻末にひかわさんが「どうしておじゃる様のようなキャラクターが出てきたか」という話をされてて、テレビ『柳生一族の陰謀』の烏丸少将が格好良かったから、って書いてあって。

調べたら、烏丸少将を演じたのは成田三樹夫さん。あー、なんかわかる。すごくわかる。『柳生』見てなかったけどそりゃ絶対格好良かったやろな。

ちょっと宝塚でやってみてほしいキャラクターでもあります、おじゃる様。うぷぷ。

【関連記事】
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『お伽もよう綾にしき ふたたび』第3巻/ひかわきょうこ
『お伽もよう綾にしき ふたたび』第5巻/ひかわきょうこ
『お伽もよう綾にしき ふたたび』第6巻/ひかわきょうこ
もし宝塚で『お伽もよう綾にしき』をやるとしたら