『フェルマーの最終定理』が面白かったので、サイモン・シンさんの別の著書を手にとってみました。

というか、すっかり「字の本」を読まなくなった息子ちゃんが読んでくれるんちゃうかなー、と思って息子ちゃん用に買ったの。

低学年の時は図書館でどーんと本を借りてきていたのに、ある程度「面白そうなの」は読んでしまって、最近はまったく図書館に足を向けてない。マンガばっかりなのよね。

せっかく「読める力」があるのにもったいない、という母のおせっかいで時々「これどう?」と押しつけるわけです。『フェルマー』は読んでないけど、『異端の数0』は楽しんでいたし。

「息子ちゃん用」として買うと彼の本棚に置くことができるので助かる、という話も(笑)。私の本棚もういっぱいで、段ボール箱だからさぁ。

……相変わらずいらん前置き長いです。すいません。

サイモン・シンさんは「語り」が本当にお上手ですね。暗号の歴史、暗号に関わった人々のドラマ、今回も読ませてくれます。

暗号のみならず「ヒエログリフ」や「線文字B」の解読話も出てくるし、「ナヴァホ・コードトーカー」なんてまったく知らなかったので「へぇ」でした。

でも私はやっぱり『フェルマー』の方が好きだなぁ。

それはシンさんのせいじゃなくて、「数学の定理」と「暗号」の性格の違いのせいですけど。

「暗号」の歴史はそのほとんどが「軍事上の歴史」で、暗号作成及び解読に携わった人々の多くは「軍事機密」として世に知られることはない。国防に多大な貢献をなしたにも関わらず哀しい最期を遂げた人がいたり、「最初に発見したのは俺たちだ!」と名乗れなかったり。

「負の歴史」というのかしら。

「暗号」ってそのようにすごく実用的なものなんだよな。

「役に立たないもの」が好きな私としては、「それが証明できたからどうだっていうんだ?」な「最終定理」の方がわくわくする。(もちろん一般人には理解しがたい、“それが証明できるとこんなことが…”があるんだろうけれど)

暗号が解読できなかった・あるいは解読されてしまったせいで何万人の死者が出る。

なんだかな…、と思います。

でも今や暗号は軍事のみならず、日常的に使われているのです。

そう、ネット上で。

後半、「公開鍵」暗号の話が出てきます。安全にネットで情報を送るために「暗号化」は不可欠。今私は無線LANでネット繋いでblog書いてるわけですが、無線LAN親機との間の通信はもちろん暗号化されているわけです。

日々暗号にお世話になっているんですよねー。

この本の最後には「量子暗号」というのも出てきて、実現すればついに「絶対に破られない暗号」になるらしいのですが。

うーん、あんなもの実現できるんだろうか。

「光子を1個ずつ」とか想像できなさすぎる。

さすがの息子ちゃんも「量子暗号のところはさっぱりわからなかった」らしく。

アリスとボブの公開鍵暗号のとこまではそれなりに楽しんだようです。ただ、どうしても例が英語なので、「意味がわからん」(笑)。

あと、「補遺」が最後にあるのが困る、と。

文庫本、上下2冊なのに上巻の内容の補遺も下巻の最後に収録されているので、すぐに参照できない。「今更読んでももう忘れてるし、補遺はいいや」と息子ちゃん。

私は一応読んだけど、確かに上巻の内容が既に…。ええっとヴィジュネル暗号ってのはどれのことだったかいな(汗)。

巻末についている懸賞暗号も、解読して出て来る平文が英語のみならずフランス語やらスペイン語やら…。どのみちステージ1以外は歯が立ちそうにないとはいえ(全10ステージの後半は解読にコンピュータが必要らしい)、日本人にはハードル高すぎ。

でも「暗号の歴史」をたどる本に、暗号の歴史通り難しくなっていく懸賞暗号がついてるなんて面白いよね。これだけの暗号作るの、かなりな労力のはず。すごいなー、シンさん。もちろん一人で作ってはいないだろうけど、作ろうって考えること自体がお茶目。


この本で語られているのは「欧米の暗号の歴史」だけれども、日本語の「暗号の歴史」って、どうなんだろうね。

日本語でもアルファベット26文字の代わりに50音使って換字式とか同じ仕組みで暗号化できるだろうけど。

日本語の頻度分析で一番出て来る文字って何? 語頭に「を」「ん」は来ないけど……。

そういえば昔『矢萩の里の物語』(by佐香厚子)というマンガがあって、その中の財宝のありかを示す暗号(確か)が「へん」と「つくり」の組合せになってて、「へぇ!」って思ったことあったな。

カ行は「木へん」、ア段は「春」というふうに行と段に「へん」と「つくり」を設定して、その組合せで50音を表す(確か)。

ものすごい難しい漢文が書いてあるように見えて、実は漢字1文字が仮名1文字を表す。

懐かしいな。あのマンガ好きだった。……って、ここで冒頭試し読みできるじゃん。きゃー、感激!

……と、こうしてネット様々な生活ができるのも暗号のおかげなのですよね。

ありがたや。