市東亮子さんの『エリュシオン』に触発されて、『イリアス』を読んでいます。

言わずと知れたホメロスの叙事詩。世界最古?というわけでもないのかな??

少なくともギリシアでは「最古」で、そして「最高の叙事詩」と言われているそうです。

紀元前8世紀頃成立し、紀元前6世紀頃文字化、紀元前2世紀頃に現在目にするような形になったのだとか(Wikipedia参照)。

紀元前8世紀って、日本、何時代ですか? まだ弥生時代???

さすが古代ギリシャって感じですが。

講談社の『少年少女世界文学全集』の第1巻に「ギリシャ神話」とともに「イリアス」「オデュッセイア」が収められていましたものねぇ。読んだ記憶があんまりないんですけども(汗)。

図書館で岩波文庫版を借りてきて、本当は上巻を読んだところで一回感想を書こうと思ったんですが。

読み進むのが大変で、返却期限ギリギリになっちゃって、感想を書く余裕がなかった。

そもそも感想がなかった……。

Wikipediaを見てもらえば「あらすじ」も書いてありますし、トロイア戦争の一部分を描いているというのは、まぁ有名だろうと思います。

私ずっと『イリアス』というタイトルがトロイアと同義だって知らなかったんですけどね……。

訳文自体はかなり読みやすいと思うんだけど、この辺の、「同じ土地・人を指す言葉が複数ある」のがどうにもめんどくさい。

それでなくても古代ギリシアの地名なんかアテネとスパルタとトロイアぐらいしかわからないのに、トロイアとイリアスが同義だったり、当人の名前ではなく「○○の子」というふうに書かれていたり。

もちろん主要な登場人物(アキレウスとかヘクトルとかメネラオス)については「○○の子」という表現もすぐ慣れるんだけど、何せ登場人物多いですから。

戦闘中の記述なんか、トロイア側なのかアカイア側なのかもよくわかんなくて。

まぁ、その辺はテキトーに飛ばして読んだりしてます(笑)。

もともと口承で「語られていた」ものだから「枕詞」みたいのもあるし、「戦記物」として誰が誰を討ち取ったかという記述がいちいちあり、そこにまた誰それの父はなんとかいう闘いの時にはこれこれこーゆー活躍をして、誰それが今トロイア側にいるのはこれこれこーゆーわけがあって……みたいな「おまけ」がつき。

ああ、めんどくさい!(笑)

当時吟遊詩人からこのお話を聞く人にとっては地名も人名もお馴染みのものだったんだろうし、息詰まる戦闘の場面では大いに盛り上がったんだろうなぁ、とは思うのですが。

そしてそういった「戦記物」としての表現は「平家物語」とかにも通じるのだろうと思うのですが。

私は苦手なんだよ、戦闘場面。

事実描写よりも心理描写の方が好きだし。

おかげで上巻はホントに読み進むのが苦痛で……まったく話が頭に入らないまま、とにかく字面を追っていた。

それでも投げ出さずにちゃんと下巻も借りてくるんだから、ほんと私も本に対しては律儀なヤツですが。

上巻に比べると下巻はまだ面白い。わくわく感が上巻よりはある。

上巻でいきなりアキレウスはアガメムノンと仲違いし、以後戦闘には加わらない。下巻になって、アキレウスの親友パトロクロスがアキレウスの武具をつけて戦陣に加わり、戦死。そしてそのことに憤然としたアキレウスはアガメムノンと和解し、自ら戦場に赴く。

長い前段が終わってやっとクライマックス!といった感じでしょうか。

真打ち登場!みたいな。

アキレウスが自分も死ぬことを知っているところがまたなんとも。

トロイア戦争ってそもそものことの起こりが例の「女神の林檎」だし、その後も神々が「トロイア勢・アカイア勢のどっちに肩入れするか」で争って、「もうやめようよ」って言ってる人間を「何言ってんだ、闘え!」と焚きつけたりする。

この神々の干渉がまた、うっとうしいんだなぁ。

神々に翻弄される人間。

神々の気まぐれで、累々たる死体が積み上がる。

古代の人はそれで良かったのかなぁ。

たびたびヘクトルが罵ってるように、ヘレネを奪ってトロイア戦争の発端となったパリスは「疫病神」みたいなヤツで、「おまえさえいなければトロイアは平和だった」って思うんだけど、でもパリスがヘレネを奪った背景には「女神の争い」があって、パリスには致し方なかった、ということにもなっている。

どちらが勝っても負けても、誰が死んでも、それは神様方の思し召し。

なんかむかつくんだけど(笑)。

「神様のせい」にする方が楽な時はあるけど、でも読んでると神様に腹が立ってくる……。

アキレウスは女神を母に持つこともあって、自分がトロイアの地で死ぬということは聴き知っている。それでも闘う……というか、どうしたってそういう運命で、闘わなくても「そこで死ぬ定め」なんだから、「見事に闘って死のう!」なのかもしれないけど、でも自分の運命を知ってなお平静でいられるって、すごいなぁ。

まぁ、だからって別にアキレウスを格好いいとか素敵とは思わないんだけど。

うん、ここ重要だよね。

登場人物に思い入れできないってところ。

比喩表現とか素晴らしいし、なかなか素敵なセリフとかもあるんだけど、やっぱり「叙事詩」だし、個々の「人間ドラマ」が最終的に歴史というタペストリを織り上げる、っていうのとは違う。

織り上がったタペストリに従って、個々の人間の活躍を叙述している、って感じだものね。

一応これ終わったら『トロイア戦記』にも挑戦してみるつもりなんだけど、うーむ……。