なわけで別記事。
養老センセと内田センセの対談に出てきた「日本語の特殊性」。
「日本語」というか、「日本の書き言葉の特殊性」というのが正確なのかな。
日本の文字は漢字(表意文字)と仮名(表音文字)の両方から成り立っている。
こういう書き言葉を持つ国は、日本だけ。
で、日本人は文章を読む時に、「漢字」は「画像」として処理して、「仮名」の方は「音声」として処理しているらしく、だから「絵」と「言葉」を同時に追っていく「マンガ」という形式が、日本人にとってはごくあたりまえの表現として受け入れられる。
というか、だから日本でこれほどマンガが興隆した。
日本は識字率が大変高くて、現代に限らず江戸時代の識字率も、抜きんでて高かった。
「漢字」+「仮名」のハイブリッド構造あればこそ、これほどまでにみんな「字が読める」のではないか、というお話だった。
「読めなければ、真に日本語を使うことはできない」というふうにもおっしゃっていたな。
「書き言葉」と「話し言葉」は、方言話者にとっては一致しない部分もとっても多いので、「書き言葉」だけを「日本語」と規定されてしまうと「うーん」というところもあるのだけど。
でも「漢字」+「仮名」の組み合わせが、日本人の脳を外国人の脳とは別のものにしているであろう、というのは納得できる。
マンガを読む時に、まず脳は見開き全部を「一枚の画像」として、入力&処理しているらしい。
そしてその後で、コマを追い、ふきだしの中(ことば)を追う。
無意識的には先に見開き全部見てしまってて、後から意識的にもう一度見て(読んで)いる。
「絵」の入力と処理のスピードは、音声言語の入力・処理よりも速い。
「絵」は、ぱっと見ただけで何が描かれているかがわかる。
森があって湖があって湖畔に小屋があって、その脇で女性が水浴している、というような情報が、一度にぱっと飛び込んでくる。
……で、思ったんだけど。
だから日本語は「速読」とか「ななめ読み」とかが可能なのかな。
私は外国語はまったくダメなので、英語の文章を「ななめ読み」できるはずもないんだけど、英語を母語としている人は、「ななめ読み」ができるのだろうか。
「漢字」は「表意文字」で、それ自体に「意味」があるから、漢字を追っていくだけで大体の意味が掴める、ということもあるし、「漢字」は「画像」で、脳の処理スピードも速い。
……で、さらに思ったんだけど。
だからTwitterと日本語は相性がいいのかもしれない。
同じ140文字でも、「意味」を含んだ「漢字」が使える分、他の言語より伝えられる情報量は多くなる。
発言する時のその有利さに加えて、読む時も、きっと日本人、読むの速い。
フォローしている数が増えるにつれ、タイムライン(以下TLと表示)の流れがどんどん速くなり、本当に追いかけるのが大変になってくるんだけど、それでも日本語は半分「画像」で処理できるから、「ななめ読み」してテキトーに読み飛ばすことができる。
どれを読み飛ばし、どれをチェックするか、日本人は半ば無意識的に判断できるんじゃないかな~。
逆に言うと、それが得意な人がTwitterのヘビーユーザーになるのでは。
文字好きな人。
文字ががーっと流れていくのに抵抗を覚えない人。
もちろん私は文字見てないと目が寂しくてしかたない活字中毒者(笑)。
あ、そうか!だからうちの息子もあんなにTwitterが好きなのか!!
息子、自分ではアカウントも持っていないにも関わらず、香美さんと毎日新聞との勉強会「つい9」など大好きで、すぐに横からPCをのぞき込み、「ちょっと下行って」「待って、まだ読んでない」などとつぶやきを読んでいる。
そうだ、彼もまた大変な活字中毒者なのだ。歯磨きする時も、布団に入ってからも、うっかりすると着替えながらでも本(マンガ含む)を読んでいる。
朝ご飯も、本を読みながらパンを食べる。
何か読んでいないと目がさびしいのだ、彼も。
しかし、となると漢字の本家本元、中国語とTwitterの相性はどうなのだろうか?
漢字ばっかりがTLを埋め尽くしている図、想像するとなんかすごいけど、アルファベット圏の人にとっては日本語の文章だって大差ない印象だろうな。
中国語だと、漢字は「表意文字」でもあり、「表音文字」(一文字一音節)でもあると思うのだけど、中国人は文章を読むとき、漢字を「画像処理」しているのかな???
英語のTLとか、フランス語のTLとか、スワヒリ語のTLとか……母語話者には当たり前に「ななめ読み」できるのかな。
おとといの対談の中で、フランス語は綴りと発音の対応が非常に難しくて、子どもがすらすら読めるようになるのにかなり時間がかかる、というような話をされていた。
「文字情報でのやりとり」がスムーズにできる人々って、他の国では意外に限られていたりするんじゃないだろうか。
日本は昔から「日記」をつけるのが盛んで、blogやケータイメール、そしてTwitterもこうして普及、流行しているわけだけど、それってやっぱり「識字率が高い」からこそで、それを支える「日本語の書き言葉の特性」あったればこそなんだろう。
日本の国語教育ではこれまで「読み書き」が重視されて、「話す」方はあまり力が入れられてなかった。
英語教育もそうで、文法、読み書き中心に教えてきて、6年習っても全然しゃべれない私のような人間を生産してた。
これではダメだってんで、英語も国語も「話す」方に力を入れ始め、「ディベートの授業」とか行われているようだけど。
おととい内田センセと養老センセがおっしゃてたように、「ちゃんと読めなければ真に日本語の使い手にはなれない」んじゃないのかな。
議論して相手を言いくるめようと思ったら、難しげな専門用語とか高度なレトリックとか、表現の幅をたくさん持っておかないといけないし、「話し言葉」だけで語彙や表現技法を豊かにするのは無理だもの。
「議論する中身」=「思考」を鍛えるのも、「読み書き」だと思うし。
表意文字と表音文字を組み合わせて使うハイブリッド言語。
かつては「漢字も仮名も捨てて全部ローマ字にしちゃおう!」という話もかなり本気であったようだけど、そんなことしたら終わりです。
もし全部ローマ字になってたら、こんなにblogとか流行ってないよね、きっと。
ハイパフォーマンスで素敵な日本語、もっともっと大事にしなくちゃ。
日本語話者で良かった。るん♪
PC&Web
0 Comments
コメントを投稿