以前にご紹介した青池保子さんの歴史ロマン『アルカサル~王城~』

その外伝が昨年末単行本化されました。わ~い\(^o^)/

『アルカサル』本編の方は図書ボラ仲間のTちゃんに借りて読んだのですね。なので本屋で外伝が単行本になってるのを見て、「Tちゃんに言わなきゃ!」と思ってたんですが。

会うといつもマンガのことは忘れてて、先日やっと別れ際に「あ~っ、そうだ!『アルカサル』の外伝出てるよ!知ってた!?」と言ったところ。

知らなかったらしいTちゃん、早速買ってくれて、3日後くらいには貸してくれた。

しかも息子経由で。

うちの息子とTちゃんのお嬢さんは現在同じクラス。学校から帰ってきた息子がやおら紙袋を取り出し、「Fちゃんのお母さんからお届けもの。『エロイカより愛をこめて』みたいやで~」。

こらこら、Tちゃん。学校にマンガ持ってったらあかんがな(笑)。

良識ある(?)息子は中を出してはみなかったものの、やはり周りの友達とかが興味津々で、紙袋を透かして「何が入ってるんだ???」とやっていたらしい。

そりゃあ女の子が男の子になんか渡したら、「お母さんから、お母さんに渡してって」って言われたってやっぱり気になるよね。

ちょうどバレンタイン直後でもあったし(笑)。

そんで一生懸命透かして見えたのが、帯の『エロイカ』という文字だったらしい。

うちの息子は母親の躾がいいので、『エロイカより愛をこめて』もちゃんと知ってるんだな。

持つべきものはお友達と、母親の趣味に理解のある息子です(爆)。

まぁそんな前段はともかく。

『アルカサル』です。外伝の方、表紙が出なくてさびしいから本編の方を表示しておくと。



この黒髪美形男子が主人公ドン・ペドロ。中世スペイン(カスティリア)の実在の王様です。

ドン・ペドロの熱い生き様を描いた本編は本当に面白くて、素晴らしくて、最後は涙なくしては読めませんでした。

死んじゃうんだよね、ドン・ペドロ。志半ばで、敵の謀略にかかって。どんな困難をも不屈の闘志で乗り越え、不死鳥のように蘇ってきた彼も、やはり死を免れることはできない。

残された者達の彼への想い、彼の志を継いでの奮闘が心に沁みて、ボロボロに泣いちゃった最終巻だった。

今度の外伝には3つのお話が収められていて、一つ目の『公爵夫人の記』はドン・ペドロの次女コンスタンシアの、父亡き後の奮闘記。

これがまたホントになぁ。

耳鼻科で順番待ちしてる間に読んでたんだけど、途中で涙出てきちゃって、焦ったよ。

人前で読んではいけない本だった。

父の汚名を晴らし、再びカスティリアの王権を手にするため、イギリスのランカスター公と政略結婚をするコンスタンシア。たったの17歳で、14歳も年上の異国の相手と結婚したんだよね。

ランカスター公は再婚で、しかも当然愛人がいて。

まぁ、昔の王侯貴族にとっては、結婚に愛のないのはあたりまえ、顔も見たことのないよその国の人と結婚するのもあたりまえ。めでたく愛し合えたとしても、母国の事情が変わればさっさと離婚させられてまた別の国へ嫁がされたり……。

現代日本の庶民で良かったと思うばかり。

コンスタンシアが、「夫に愛されなくてもいい。私の最愛の人はお父様だ」っていって、ドン・ペドロのことを想うシーンがあって。

「大人になるほど想いは募るばかり。
あなたがどんなに素晴らしい男性であったか」

……ここで泣いちまった……。

確かにあんなすごい男を父親に持ったら、あとはみんな雑魚にしか見えないよな。

ランカスター公とはその後和解して、良き夫婦になるとはいえ、やっぱり彼女を支え続けたのは父への想いだったろう。

本編でのドン・ペドロの生き様が、娘でもなんでもないただの読者の私にも蘇ってくるし、父の無念を晴らし、故郷の地へ帰りたいと願うコンスタンシアの想いもなぜか我がことのようにじーんと胸に迫って。

歴史の大波にもてあそばれながら、決して諦めず、卑屈にもならず、気高く誇りを持って生き抜いたコンスタンシア。

あっぱれな女性です。

二つ目と三つ目はドン・ペドロ健在の頃のエピソード。

二つ目も、当時の身分ある女性の悲しさを描いたお話です。ずっと尼寺で育って、家督を継ぐために愛人のいるおっさんと結婚させられて、恋など知らずに生きてきて……ドン・ペドロに出逢っちゃった。

罪だよなぁ、ドン・ペドロ。

でもやっぱり彼女は、ドン・ペドロに出逢えて、恋することを知って、幸せだったんじゃないかな。

三つ目のお話は、ドン・ペドロと修道士ファルコとの再会♪

『修道士ファルコ』は昨年の5月頃、自分で買って読んだんですが、blogでは紹介してなかったかも。



元は凄腕の剣客ながら、今は修道士のファルコ。ファルコがドイツの修道院に旅立つ前、ドン・ペドロと会うエピソードがあって、去年読んだ時に「おおっ!」と思ったのですが。

その二人がめでたく再会して事件を解決。

いやはや、楽しい。

ドン・ペドロの腹心ロペスの活躍も見られるし。

Tちゃんが、「死んだ人が元気に活躍してるのって、和むわ~」って言ってたんだけど、ホントにね。本編の結末を知っている今、こうして生きているドン・ペドロの楽しい話を読むのはなんともいえず、温かい気持ちになる。

なんか、ただのマンガのキャラクターなのに、すっかり「お友達」っていうか、「ああ、また逢えたね」って思っちゃう。

今はもういない大好きな人のかつてのエピソードを、思いがけない人から聞かせてもらったみたいな。

青池さんのストーリーテリングの巧みさに、今回もメロメロです。

外伝書いてくれてありがとう。

「1巻」ってなってるからには、まだまだ色んな話が聞けるんだよね? 期待しています。

帯に載ってた『エロイカ』の番外編も早く読みたいな♪

『エロイカ』って、もう32年もやってるんだって!

32年……。私、中学の時から読んでるんだもんね。

すごいなぁ。

なんか、幸せだな、ホントに。

そんなふうにずっと、自分の人生に寄り添ってくれる作品がある。少女だった日々が、断絶した「過去」ではなくて、ちゃんと今に続いている。

ありがとう、青池さん。

ずっとずっと、『エロイカ』も描いてくださいね。