昨日、「焼け太り」という言葉の意味を調べるのに、新明解国語辞典を使ったが、私はこの「新解さん」を愛用している。
もうだいぶ以前に赤瀬川原平さんが『新解さんの謎』という本を出して、新解さんの独自性については衆知の事実になっている(?)が、その後も赤瀬川さんにくだんの本を出させた張本人、夏石鈴子さんが『新解さんを読む』『新解さんリターンズ』と2冊も本を書いてらっしゃるそうだ。

私が新解さんを使うようになったのは、たぶん大学生ぐらいの時で、自分で買ったのではなく、弟が中学か高校で買わされて、でも本人はまったく使っていなくてほぼ新品状態だった物を、勝手に私物化していたのだった。

たぶん4版ぐらいのもの。

当時はずっと原稿を手で書いていたので、辞書は必需品だった。意味はもちろん、漢字がわからないと調べなきゃならない。今みたいに勝手にATOKが変換してくれないし。
ものすごく使い込んで、かなりくたびれていた。
結婚して、パソコンで原稿を書くようになっても、ずっと傍に置いていたが、数年前6版が出た時に買い替えた。
古い4版は捨ててしまったが、今思うともったいないような気もする。あの使い込んだ感じがなんとも良かったんだがなぁ。私の青春の一部が詰まってるみたいで(大げさ)。

6版は前より分厚くなっている。

パソコンの傍には同じ三省堂の『大辞林』もある。橋本治さんが愛用しているという話を聞いて、誕生日プレゼントとして夫に買ってもらった(だって6000円もしたんだもん)が、でかいので結局めったに使わない。
冒頭に色の名前が載っていたり、「気象の言葉」「枕詞」など途中に付録みたいのが付いているのが面白い。
でもやっぱりめったに見ない。

リビングには旺文社の国語辞典(夫が学生時代に使っていたもの)があって、最近よく活用されている。
息子が質問魔で、テレビを見ても本を読んでも「○○
って何?」「××ってどういう意味?」とやたらに聞きまくるので、うまく説明できない時に頼る。
なかなか、知っていることでもいざ人に説明しようと思うと難しくて、辞書をひいて私の方が「へ〜、そういう意味やったんか」と勉強することが多い。

ちなみに昨日の「焼け太り」。
新解さんでは「火災にあったことがきっかけとなり、思いがけない人の善意に恵まれるなどして、以前よりもかえって生活が豊かに(事業が大きく)なること」とある。
旺文社の辞書(1983年のもの)では「火災にあったあと、以前よりも生活が裕福になったり、事業が大きくなったりすること」。
大辞林(二版)では「火事にあって、かえって生活や事業が豊かになること。やけ誇り」

やはり新解さんはお節介というか、他の辞書がさらっと行ってるところにわざわざ「思いがけない人の善意に恵まれる」なんてよけいな注釈を入れていて楽しい。

ついでに「やけ(自棄)」を引いてみると。

新解さん「どうしようも無い不結果に心の平静を失い、つい不摂生を重ねたりむちゃな事をやったりすること」
旺文社「物事が思うとおりにならないために、前後のわきまえなく乱暴な言動をすること」

「心の平静を失う」だけでなく、「つい」という言葉まで入れてしまうところが新解さんである。